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解説(終活関連):遺言
遺言とは
自分の財産等を死後どう処分するかその意思表示のことですが、よくテレビドラマなどでは「ゆいごん」と呼ばれており、法律用語では「いごん」と呼んでいます。そして、仲の良い家族であっても、いざ相続が発生するとバタバタして相続財産を巡ったトラブルに発展するというケースがあります。
突然の他界で生前に遺言書を残していなかった場合は、法定相続分に従って相続されます。
しかし、亡くなった被相続人が生前特に世話になった人がいる、長男には不動産を、次男には銀行預金をなど本人の希望・意志を正式に残しておく仕組みが遺言となります。
遺言者になれる人
法律(民法)でなれる人、なれない人が定められています。
成年後見制度で法定後見に該当する被保佐人、被補助人は遺言者になれますが、成年被後見人は判断能力がないとされているため、原則として、遺言者にはなれません。
(注) |
夫婦そろって等二人以上の者が同一の遺言書に書くことはできず、その場合、無効となります(共同遺言の禁止) |
遺言でできること
◆財産の処分に関すること
- 第三者への遺贈(遺言によって財産を分け与えること)
- 寄付、財団の設立
- 信託の設定
◆相続に関すること
- 法定相続分と異なる割合の指定
- 相続人ごとに相続させる財産の特定
- 5年内の遺産分割の禁止
- 推定相続人の廃除、またはその取消 (遺言執行者しか執行できない事項) など
◆身分に関すること
- 子の認知 (遺言執行者しか執行できない事項)
- 未成年者の後見人、後見監督人の指定 など
◆その他
- 遺言執行人の指定またはその指定の委託
- 祭祀の承継(仏壇、お墓を誰に任せるか)
- 生命保険金受取人の指定、及び変更 など
(注) |
遺言は生前の被相続人の意志の現れであり、遺言があれば相続人は遺言を尊重するようにしますが、相続人全員が遺言書の内容に反する遺産分割を協議し全員が合意した場合は、その遺産分割協議は遺言に優先します |
遺言の方式
遺言の方式には、普通の方式と特別の方式の2つあります。
(1)普通の方式
①自筆証書遺言
作成要領 |
- 本人がペンで遺言内容を自筆で書きます
- ただし、相続財産である預貯金口座や不動産所在地等を特定する相続財産目録は別紙としてワープロで作成したり、通帳の該当箇所記載ページの写しや不動産登記簿謄本の写し等財産を証明できる資料を添付することができます
- 日付を記入します。その日付は客観的に特定できるように書きます。「◯年◯月吉日」では無効となります
- 遺言書本文末尾に署名・押印します。認印でも良いですができれば実印
- 別紙にした財産目録各ページにも同様に署名・押印します
- 訂正したら、訂正した旨を書き、署名・訂正印をします
- 遺言書を封筒に入れて封をし、本文に押印したのと同じ印鑑で封印をします
- 封印した遺言書を保管しておきます。後日見つけてもらうために分かりやすい場所に保管します(配偶者には伝えておく等)
- なお、令和2年7月10日(金)から、自筆証書遺言書保管制度が開始され、事前に作成した自筆証書遺言書を所定の法務局に申請することで、保管してもらえます(保管料は、1通あたり3,900円)。ただし、法務局では遺言作成方法の相談はできませんのでご注意ください
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長所 |
- 遺言の存在、内容を秘密にできる
- 費用もかからず簡単に作成できる
- いつでも内容を書き換え、変更できる(何度でも変更可能で、最後に書いたものが有効になります)
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短所 |
- せっかく書いた遺言書が見つからないこともある
- 誰かに発見されて隠されたり、偽造されたり、もしくは紛失してしまう可能性がある
- ワープロで書いてあったり、日付が確定できない、署名押印されていなかったりして、有効な遺言書と扱われないこともある
- 必ず家庭裁判所の検認を受ける必要がある(内容ではなく有効な遺言書の要件を備えているかどうかの確認)
- ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の紛失や誰かに偽造されたりする恐れがなくなり、さらに家庭裁判所の検認が不要となります
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②秘密証書遺言
作成要領 |
- 本人が自筆証書遺言と同じ要領で遺言書を作成します(内容のワープロ、代筆も可能、署名押印は本人)
- 2人以上の証人を連れて遺言書を公証役場へ持っていきます
- 公証人がその封書上に、遺言者の自己の遺言書である旨、提出した日付を書いてくれます。公証人は「内容」は確認しません
- 遺言者は証人と共に、その封書に署名・押印することにより、遺言書が作成されます
- 遺言書を封筒に入れて封をし、本文に押印したのと同じ印鑑で封印をします
- 遺言書は遺言者自身で保管します
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長所 |
- 遺言書の「内容」を他人に秘密にしたまま、遺言書の「存在」を明らかにできる
- 遺言書の偽造・変造の心配がほとんどない
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短所 |
- 公証人を利用しなければならないため、面倒な手続きと費用(定額手数料11,000円)がかかる
- 2人以上の証人が必要
- 公証人は遺言の「内容」まで確認をするわけではないので、遺言としての要件が欠けてしまう場合もある
- 自筆証書遺言と同じく、発見されなかったり、隠されたり、紛失してしまうおそれがある
- 自筆証書遺言と同じく、必ず家庭裁判所の検認を受ける必要がある
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③公正証書遺言
作成要領 |
- 2人以上の証人と共に公証役場に出向き、遺言者が公証人に遺言の内容を口述し、証人立ち会いのもと公証人が遺言書を筆記します
- 公証役場に出向けない場合(入院中、身体不自由等)は、公証人が出向いてくれます
- 公証人が筆記したものを遺言者と証人に読み上げたり、閲覧させます。そして遺言者本人と証人が、筆記したものを確認した後、署名押印をします
- 最後に、公証人が手続きに従って作成した旨を付記して、署名、押印します
- 作成された公正証書遺言の原本は、公証人によって保管されます。そして、遺言者には原本と同一の効力を有する正本と謄本が渡されます
- 遺言執行者が指定されている場合、正本は遺言執行者、謄本は遺言者本人が保管するのが一般的で、遺言者死亡後、遺言執行者が正本を使って各種手続を行います
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長所 |
- 公証人が作成するので、遺言書の要件は満たしており、有効な遺言書となる
- 遺言書の原本が必ず公証役場に保管されるため、隠されたり、偽造されたり、紛失する恐れがない。遺言者が正本を紛失しても再発行してもらえる
- 家庭裁判所の検認が不要
- 公正証書遺言を作成してあることが分かっていれば、法定相続人等が相続発生時に公証役場で検索することができる
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短所 |
- 公証人を利用しなければならないため費用(手数料は相続財産の額によって変わる。最低で100万円までで5,000円等)がかかる
- 2人以上の証人が必要
- 証人には「内容」が知られてしまう
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(2)特別の方式
特別方式には危急時遺言と隔絶地遺言があります。危急時遺言には一般危急時遺言、難船危急時遺言があり、隔絶地遺言には一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言があります。
これらの方式は、普通方式による遺言が困難な場合において特別に認められた略式の方法であるため、遺言者が普通方式での遺言を作成できるようになったときから6ヶ月間生存していた場合は無効となります。
★遺言方式別関係者の関わり
遺言方式 |
証人または立会人 |
遺言を書く人 |
署名捺印 |
普通 |
自筆証書 |
不要 |
本人 |
本人 |
秘密証書 |
公証人1人、証人2人以上 |
誰でもよい |
本人、証人、公証人 |
公正証書 |
公証人1人、証人2人以上 |
公証人が口述を筆記 |
本人、証人、公証人 |
特別 |
一般危急 |
証人3人以上 |
証人の1人が口述を筆記 |
各証人 |
難船危急 |
証人2人以上 |
証人の1人が口述を筆記 |
各証人 |
一般隔絶 |
警官1人、証人1人以上 |
誰でもよい |
本人、筆記者、証人 |
船舶隔絶 |
船長また事務員1人以上、 証人2人以上 |
誰でもよい |
本人、筆記者、証人 |
(注)相続に利害関係のある人(推定相続人等)、未成年者は証人にはなれません